不動産をお持ちの方が亡くなられた場合、その名義は相続人に移ることになります。まず一時的には、相続人ごとに法律上決められた持分が振り分けられますが、相続人全員の同意でどなたかお一人が相続するという遺産分割協議が成立した場合、そのお一人に直接不動産の名義を移すことが可能です。
※遺産分割協議に参加するのは戸籍上で判明する相続人全員です。現在連絡を取り合われている親族だけではなく、戸籍上で血縁関係にある相続人全員の同意が必要となります。

 


不動産の名義を亡くなった人のままにしておいても、直ちに問題となることはありませんが以下のような場合に備えて早めの相続登記をおすすめします。

1 不動産の売却をお考えの場合

不動産の名義を買主様に移す前に、一旦相続人の方の名義にする必要があります。(法律上、@相続が発生し、相続人の方へ不動産が承継された⇒A相続人の方から買主様へ不動産を売却した、と時系列に沿った登記手続きが必要となるためです。)
また、一般的に不動産を流通に乗せる前段階として、売主様である相続人の方の名義にしておくことが不可欠です。


2 不動産の名義人の方が亡くなられてから時間が経っている場合 
相続登記をせずに時間が経つと、相続人となっていた方が死亡してさらにそのお子さんが相続人となっている場合があります。現在ご高齢の方ならばお子さんがたくさんいらっしゃるという方も多いですが、例えばそのような方が相続人のお一人であって、名義変更登記をしないままお亡くなりになった場合(数字相続と言います)、結果として一つの不動産に対する相続人が、数十人規模になるケースも時々見られます。
このような状態になってしまいますと、すべての相続人の方に連絡を取るだけでも大変な作業となりますので(遺産分割協議の同意を取り付けるのはさらに難しくなります)、不動産の名義の変更はできるだけ相続人が少ない状態で行ったほうが手間と費用が少なくて済みます。




不動産を所有している方が亡くなられた場合(法律用語で死亡された方を「被相続人」と言います)、被相続人から相続人へ不動産の登記名義を変更する手続きが必要になります。
以下では相続開始後に必要となる、不動産の登記名義の変更手続きについてご紹介させて頂きます。

まず、下記の図は相続が開始してから不動産の登記名義を変更するまでの一般的な手続きの流れを示したものです。

 


 

上図では、途中、A(法定相続)とB(遺産分割協議)に分岐していることがお分かりになると思います。


A(法定相続)による場合と、B(遺産分割協議)による場合の違いを簡単に説明しますと・・

 

A(法定相続):法律上定められた法定相続分(下記図表2を参考)にて相続人の方々に相続登記をする場合です。
(例)父、母及び子2人の4人家族で、父が亡くなり、不動産を母2分の1、子が各4分の1ずつ相続する場合は法定相続によります。(相続登記に関しては、特段、遺産分割協議書等を作成する必要がありません。)

 

 

 

 

B(遺産分割協議):(1)相続人中の特定の方が相続することを遺産分割協議によって決定する場合、もしくは(2)相続人の全員もしくは一部が法定相続分とは異なる比率で相続することを遺産分割協議によって決定する場合です。
(例1)父、母、子2人の4人家族で、父が亡くなり、母のみが不動産を相続する場合は遺産分割協議により決定します。

 

 

(例2)父、母及び子2人の4人家族で、父が亡くなり、母が10分の8、子が各10分の1ずつ不動産を相続する場合は遺産分割協議により決定します。

 

 

まずは法定相続による場合と遺産分割協議による場合の共通部分である<戸籍の取得〜相続人の判明>からご説明させて頂きます。

 

戸籍の取得@(被相続人のもの)


依頼者様から、被相続人の氏名・本籍を聴取し、亡くなった当時の戸籍から被相続人の出生までの戸籍(謄本)をたどっていきます。結婚、転居に伴い戸籍を複数回移動しているケースも多々ありますので、戸籍の請求を複数の市区町村役場に請求することになります。(本籍を置いていた市区町村役場でのみ戸籍を取り扱うためです。)
そのため、転籍を複数回繰り返している場合は、被相続人の全ての戸籍を取得するのにかなりのお時間を要することがあります。

※相続登記の際に、被相続人様ついては戸籍(謄本)以外に「戸籍の附票」という書類も添付します。
「戸籍の附票」に記載されている事項は、@本籍A氏名Bその本籍にいる間にされた住所移転の履歴です。


細かい話になりますが、不動産登記簿に記載されているのは、所有者(被相続人)の住所・氏名であり本籍は記載されていません。逆に、戸籍(謄本)に記載されているのは、本籍・氏名であり住所は記載されていません。
そのため戸籍に記載されている本人(被相続人)と、不動産登記簿に記載されている本人(被相続人)が同一人であることを、本籍・氏名・住所のすべてが記載されている戸籍の附票で証明することになります。

戸籍の附票に記載されている被相続人の住所と、不動産登記簿に記載されている被相続人の住所が異なる場合は別途ご相談ください。

 

 (参考)相続登記に関して各種証明書で判明する事項は次のとおりです。

 

証明事項

戸籍謄本

@氏名
A本籍
B親族関係(同一戸籍の方全員が記載されています)

戸籍抄本
(戸籍謄本の一部を抜粋したもの)

@氏名(特定の1名と筆頭者のみ)
A本籍

戸籍の附票

@氏名
A本籍
Bその本籍にいる間にされた住所移転の履歴

 

 戸籍の取得A(配偶者、子、(孫)のもの)
被相続人の配偶者とお子様達の戸籍(抄本)も取得する必要があります。また、被相続人の方のお子様が被相続人よりも先に亡くなっていた場合、さらに孫の代まで相続人の範囲が広がります。(法律用語で代襲相続といいます。)この場合、戸籍の取得は孫の代まで必要となります。
ただし、被相続人の配偶者、未婚のお子様については、被相続人と同一の戸籍に入っていることが通常ですので、上記戸籍の取得1で記載した被相続人の戸籍(謄本)が、配偶者、未婚のお子様の戸籍(抄本)を兼ねることになります。

 

 戸籍の取得B(関係者が把握していない被相続人の子のもの)
特殊な例ではありますが、被相続人に、ご家族も知らないお子様がいらっしゃることが判明した場合、(前婚の際にお子様が生まれていた場合や、認知したお子様が存在した場合)そのお子様まで範囲を広げて戸籍を取得する必要がでてきます。被相続人の戸籍(謄本)をたどることで、前婚の際のお子様、認知したお子様の戸籍がどこの市区町村に存在するのかが判明いたします。

 

 戸籍の取得C(直系尊属のもの(例:被相続人の両親、祖父母))
被相続人にお子様がいらっしゃらない場合は、被相続人のご両親(もしくは祖父母)が相続人となります。
ご両親(もしくは祖父母)が相続人となる場合、ご両親(もしくは祖父母)の戸籍(抄本)が必要となります。

 

 戸籍の取得D(兄弟のもの)
被相続人のご両親(もしくは祖父母)が全員亡くなっている場合は、被相続人のご兄弟が相続人となります。
ご兄弟が相続人になられる場合は、ご兄弟の戸籍(抄本)が必要なのはもちろんのこと、
被相続人のご両親の出生から死亡までの戸籍(謄本)が必要となります。これは被相続人のご両親の戸籍(謄本)を取得することで、被相続人の方の兄弟全員を(異母兄弟、異父兄弟も含めて)捜索する必要があるからです。

 

<戸籍を取得するときの注意点>
自分のものではない戸籍を市区町村役場で取得するにあたって、取得することができる人は限定されています。

 

(原則)
1.その戸籍に記載されている方(例:父の戸籍を取りたい場合、父と同一の戸籍に入っている未婚の子)
2.その戸籍から除かれた方(例:父の戸籍を取りたい場合、婚姻により戸籍からはずれた既婚の子)
3.1、2の配偶者
4.1、2の直系尊属(祖父、祖母)もしくは直系卑属(孫など)

 

(例外)
・相続登記を登記所に申請する際に添付する場合
・遺産分割の調停を申し立てるために裁判所に提出する場合
※例外的な取得による場合、戸籍等を提出する公共機関の名称(登記所、裁判所など)と、提出する理由を申出する必要があります。

 

 

文頭の図表を再度確認してみます。

 

戸籍の取得後、相続人が判明した後に、法定相続分(図表のAのルート)にて不動産を取得される場合をご説明致します。

確定した相続人の間では法律で決まった相続分が分配されますが、その比率は次のとおりです。

 

法定相続による場合の相続分


法定相続人

 

相続分(相続する割合)

@子のみ

子がすべて相続

A妻+

妻:2分の1

子:2分の1
(子が数人いれば、2分の1を子の人数で等分します)

B妻+両親

妻:3分の2

両親:3分の1
(片親のみ健在であればその方が3分の1を相続、父母揃っていれば、3分の1をさらに父・母で2等分します)

C妻+兄弟

妻:4分の3

兄弟:4分の1
(兄弟が数人いれば、4分の1を兄弟の人数で等分します)

 

※被相続人の方にお子様がいる場合は、被相続人の方の両親、兄弟には原則として相続権は発生しません。前述しましたが、上記図表2の割合で相続される場合は、特段遺産分割協議などをする必要が無いため、相続登記の申請に遺産分割協議書を添付する必要はありません。

 

 

上記の法定相続分の表と異なる比率で不動産を相続する場合、相続人全員の間で遺産分割協議(下記図表中のBのルート)を行うことになります。

 

 

 

遺産分割協議とは、亡くなられた方(被相続人)の相続財産の分配方法を相続人全員の協議によって決めることを言います。遺産分割協議を行う意味は、相続財産の分配を決定し、相続人全員で共通の認識を持つことにあります。相続人全員の話し合いにより決まった事項を、後々の争いを避けるため、遺産分割協議書という形に残します。これにより、どの財産を誰がどれだけ取得したのかを証明することができます。


遺産分割協議書を作成することは、法律上の義務とはされていませんが、ここでご紹介している相続登記をする際、相続税の申告をする際など、公的機関への提出が必要な場面があります。提出の際に遺産分割協議書に不備がありますと、手続きが中断する、もしくは最初からやり直しになる場合がありますので注意が必要です。

 

次に、遺産分割協議書の例をご紹介させて頂きます。

 

遺産分割協議書(例)
(被相続人に妻と子2人がおり、妻のみが不動産を相続する場合)

 


 

遺産分割協議書

  被相続人甲野太郎

(平成24年8月5日死亡、最後の本籍地 東京都中野区中野一丁目1番1号、最後の住所及び登記簿上の住所 東京都中野区中野一丁目1番1号)の相続財産については、同人の相続人全員において分割協議を行った結果、次のとおり遺産分割の協議が成立した。
  
1.相続財産中、下記不動産は、甲野花子が相続すること。

  

不動産の表示
所 在  中野区中野一丁目
地 番  1番
種 類  宅地
地 積  100u 

 

上記協議を証するため、本協議書1通を作成して各当事者において署名捺印のうえ、 原本については甲野花子が保有するものとする。

 

 平成●年●月●日

 

住  所  東京都中野区中野一丁目1番1号

 

氏  名  甲野花子                 個人実印
  
住  所  東京都中野区中野一丁目1番1号

 

氏  名  甲野一郎                 個人実印

 

住  所  東京都中野区中野一丁目1番1号

 

氏  名  甲野花絵                 個人実印

 


 

 

<遺産分割協議書作成の注意点>

@遺産分割協議書中、記載すべき事項は以下のとおりです。


 被相続人(亡くなった方)の表示


 協議の対象となる不動産の表示(不動産以外の財産を協議書の中に盛り込むことももちろん可能です。)


 遺産分割協議を行った年月日(遺産分割協議書作成の年月日)

 

 相続人全員の署名捺印(それぞれの個人実印にて押印する必要があります。)

 

A遺産分割協議書には不動産を取得することになる相続人を含め、法定相続人全員が署名捺印する必要があります。ただし、遺産分割協議書は1通にまとめる必要はなく、内容が同一の遺産分割協議書に各人が署名捺印することでも良いとされています。(この場合は、法定相続人の人数分の遺産分割協議書を相続登記に添付することになります。)

 

B遺産分割協議書への相続人の署名捺印については、実印での押印が必要となり、さらに印鑑証明書を添付します。遺産分割協議書に添付する印鑑証明書に有効期限はありませんが、作成時点での意思を証明するため、なるべく新しいものを添付するのが望ましいでしょう。

 

 

 

不動産を取得する相続人が決定しましたら、最後に相続登記に必要な書類を作成します。相続登記の申請をする際に法務局へ提出する書類は以下のとおりです。

 

@相続登記申請書

 

A添付書類

 

相続関係説明図
被相続人の方の戸籍の附票
不動産を取得される相続人の方の住民票
(遺産分割協議を行った場合)署名捺印済の遺産分割協議書(印鑑証明書の添付)
評価証明書(今回相続登記の対象となる不動産の本年度の評価証明書)

 

B被相続人及び相続人の方の戸籍(謄本・抄本)一式

 

C登録免許税として収める収入印紙(通常法務局内に収入印紙売り場があります)

 

<相続登記申請書の例>
(被相続人に妻と子2人がおり、法定相続する場合)

 



登記申請書

登記の目的 所有権移転・・・・・・・・・・・・・・・・・・・注1

 

原    因 平成24年8月5日 相続・・・・・・・・・・・・注2

 

相 続 人 (被相続人 甲野太郎)

 

東京都中野区中野一丁目1番1号 
持分4分の2 甲野花子    認印・・・・・・ 注3

 

東京都中野区中野一丁目1番1号 
4分の1 甲野一郎    認印

 

東京都中野区中野一丁目1番1号 
4分の1 甲野花絵    認印

 

(連絡先電話番号:03−6457−●●●●)・・注4

添付書類     登記原因証明情報  住所証明書 ・・・・・・・・・注5    

 

平成●年●月●日 申請 東京法務局中野出張所・・・・・・・・・・・注6
  
課税価格  金1500万円 ・・・・・・・・・・・・・・ 注7                                

 

登録免許税 金6万円

 

不動産の表示

所 在  中野区中野一丁目・・・・・・・・・ 注8
地 番  1番
種 類  宅地
地 積  100u


その他の事項 登記識別情報は窓口受領を希望する・・・・・・ 注9


 

注1 被相続人が、不動産を単独所有されていた場合、登記の目的は「所有権移転」となります。また、複数の方と共有されていた場合は、被相続人の持分のみ相続登記の対象となりますので、登記の目的が「甲野太郎持分全部移転」となります。


注2 登記の原因は登記の目的である「所有権移転」が、いつ・どのような原因で発生したのかを表示します。被相続人の死亡日に相続が開始したので「平成24年8月5日相続」を登記原因として記載します。

 

注3 不動産を取得する相続人を記載します。(住民票上の)住所、氏名、取得する持分を記載します。
また、ご本人から登記申請する場合、氏名の横に認印を押印します。

 

注4 ご本人から申請する場合、法務局から確認や補正(修正)のお電話が入る場合がありますので、日中繋がる電話番号を記載しておきます

 

注5 添付書類は、登記原因証明情報(戸籍等一式が含まれます)及び不動産を取得する相続人の方全員の住民票です。

 

注6 登記申請年月日、登記申請先の法務局を記載します。 登記申請先の法務局は不動産所在地を管轄する法務局です。
管轄については東京法務局のホームページなどで確認することができます。
http://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/frame.html

 

注7 課税価格、登録免許税の算定方法については、下記<登録免許税の算定>をご参照下さい。

 

注8 不動産の記載を登記簿謄本どおりに記載します。
不動産が複数ある場合は、すべて記載することができます。

 

注9 その他の事項として、登記識別情報通知の受領方法を記載します。
法務局の窓口交付による受領、自宅への簡易書留郵便による受領とを選択することができます。

 

<相続関係説明図の作成>
法務局提出用として相続関係説明図を作成します。 被相続人を中心に法定相続人全員を図の中に落とし込んでいきます。
(法定相続による場合でも、遺産分割協議を行い不動産の取得者とならなかった相続人がいる場合でも、相続関係説明図には法定相続人の全員を記載します。)

 

 

相続関係説明図の例(被相続人に妻と子2人がおり、法定相続する場合)

 

 

<登録免許税の算定>


相続登記申請をする際に法務局へ登録免許税を収めます。 登録免許税の算定は次の計算式で行います。

 

登録免許税=固定資産評価証明書記載の不動産評価額×0.4

 

(例)不動産評価額1000万円の土地と不動産評価額500万円の建物を相続した場合の登録免許税の算定方法

 

(土地建物合計)1500万円×0.4=6万円となり、相続登記の際に収める登録免許税は6万円となります。(計算の結果100円未満の端数が出た場合は切り捨てます)

 

※登記申請書の次ページに収入印紙を貼付する台紙を合綴し、6万円の収入印紙を貼付します。

 


 

以上、すべての書類がそろいましたら、法務局の窓口で相続登記の申請をします。
登記申請の完了予定日は法務局の窓口で確認でき、通常約2〜3週間で完了します。
その後法務局にて登記簿謄本を取得すると、新しく不動産の名義人になられた方へ所有権が移っていることが確認できます。

 



 

当事務所にご相談頂いた場合の手続きは次のような流れで行われます。

 

(1〜2時間程度)
 ↓

(2〜4週間程度、ケースによっては多少長くなります。)
 ↓


 ↓


 ↓

(登記申請から2週間程度で完了します。)




相続登記の際に必要となる書類は次のとおりです。
戸籍謄本・抄本
遺産分割協議書
印鑑証明書
住民票
委任状(司法書士に依頼された場合)

※戸籍についての注意点
戸籍は相続人の方でも取得可能ですが、登記申請に必要なものを漏れがなく揃える必要があります。

また、明治頃の戸籍については判読しがたい文字が混在しているうえ、血縁関係の判読が難しいものがありますので、相続人が多数いる場合は司法書士に依頼されるのがスムーズです。




相続登記について司法書士報酬35,000円〜+実費(下記参照)より承ります。

実費に含まれる費用は次の通りです。


 戸籍取得費用
 通信費、郵送費、交通費
 登記簿謄本取得費用
 登録免許税